【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第9章 4ヶ月後より前の話
「離して」
低い声で威嚇する。
鬱陶しかった。
「なあアンタ。中々の美人じゃねえか。
お、俺は、この町を束ねるリーブス商会の一人息子だ。遊んでおいて、損はないぜ」
ナンパに慣れていないであろうその男は、少し吃りながらそう話す。
リーブス商会。私でも耳にしたことがある。
トロスト区を拠点とする大きな商会で、街の経済をも動かす力を持つと聞く。
最近では兵団との取引もあるようで、リーブス商会の馬車が頻繁に兵舎を出入りしている。
「貴方と遊ぶ気はないわ。放っておいて」
「なんだよ、泣いてんじゃねえか。慰めてやるよ」
「離してって言ってるでしょ」
泣いていることがバレて更に腹が立った。
普段訓練している対人格闘の技を使って男の腕を振り解いてもいいが、リーブス商会のご子息に手荒なことをするのは気が引けた。
いざ私が兵士だとバレたときに、兵団に迷惑がかかる恐れがある。
面倒なことになった。
考え無しに外に出てきたことを今更ながら後悔する。
相手を睨みつけながら頭を回転させていると、男の後ろに誰かが近づいてきたことに気が付いた。
「なあ、いいだろ?こんな時間に出歩くくらいだから…いってえ!!!」
スパーンと気持ちいいくらいに乾いた音が鳴る。
男は、後ろからやって来た人物に思いっきり後頭部を叩かれた。
「フレーゲル。お前は本当に情けないやつだな。もうちょっとマシなナンパはできないのか」
「ゲッ!!親父!!」
「えっ、父親?」
驚いた。
フレーゲルと呼ばれた男の後ろには、確かにリーブス商会会長、ディモ・リーブスの姿があった。
トロスト区で彼の顔を知らない者はいない。
呆れ顔のディモと、父親に怯えるフレーゲルの顔を交互に見やれば、確かに顔つきが似ていた。