【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第9章 4ヶ月後より前の話
夜のトロスト区はひんやりとした空気に包まれていた。
外套を持ってこればよかったかとも思うが、今更遅い。
少しでも体を暖めようと早足で歩く。
時間帯としては殆どの人がベッドに入る時間だ。
町にいるのは酔っ払いやならず者ばかりだ。女性でこの時間に出歩いているのは、今は私一人くらいか。
涙が頬を伝う。拭うこともせずにひたすらに歩みを続けた。
やっとリヴァイ兵長に寄り添うことができたと思ったのに、私が一人で突っ走っただけだった。
リヴァイ兵長には相応しい人がいる。
私じゃない。
私なんかじゃ…
酔っ払いたちが女の私を見て口笛を吹く。
下品な言葉を投げかける者もいた。
気にせずズンズンと歩くが、目的地があるわけではなかった。
今はとにかく歩いていたい。
集団生活の兵舎の中では、泣き喚くことすらできない。
足下をネズミが駆けていった。
どれくらいがむしゃらに歩いただろうか。
「なあ、おい」
後方から男に声を掛けられた。
だが知っている声でもないので無視して歩き続ける。
「おいって。お嬢さん」
後ろから左手を掴まれた。
軽い舌打ちとともに振り返ると、小太りな男が立っていた。
金持ちなのだろう。着ている服は仕立てがとても良い。
しかし油でキチキチに固めたオールバックの髪型や顔のソバカス、そして何よりふくよかな体型が、彼を美男子から遠ざけていた。