第1章 シンデレラ
「…この人数で奇襲…イメージ通りのクソ野郎だったね」
尻尾を巻いて逃げる奴らを見送るマイキーでしたが、そこでふと思い出します。
『いいか、魔法の効力は12時までだ。時間になると魔法が解けちまうからそれまでに帰れよ』
そう、12時までに戻るように三ツ谷に注意されていたのでした。
「そういえば…そろそろ時間か?」
時計の針はもう間もなく12時を指すところでした。
…ここにいたらまずい…元に戻ったら、貧乏人だの身分がどうのと言われて面倒くせーことになる!
横たわる長内を踏んづけ、マイキーは帰り道を急ぎ始めました。
…王子ドラケン…あーあ、結局ひと言も話してねえな。
「…おい待て!そこのお前!」
ホール前の階段を下っていると、突然後ろから呼び掛ける声が聞こえます。振り返ると、王子ドラケンがマイキーを追って会場の外まで来ていました。
その姿を見て胸がとくんと鳴ります。しかし今は時間がありません。
「ダメだ…急いでるんだ!」
さっきから気になっていた王子に思いがけず呼び掛けられ、焦って草履が片方脱げてしまいます。
「チッ…拾ってるヒマねえか」
そのまま長い階段を爆速で駆け降り駐輪場へ急ぎましたが、12時の鐘が遠く城内の塔から鳴り響くのが聞こえると、そこには変わり果てた愛機の姿がありました。
「クソッ、俺のバブが…かぼちゃに戻っちまった」
気付くとまた灰まみれの小汚いボロ雑巾のような格好に戻っていて、横にはあのお化けかぼちゃが転がっています。何もかも元通りになってしまっていました。
愛機のフォルムを思い浮かべながら、マイキーは淋しそうにかぼちゃを撫でました。
あれは夢だったのか…?いや、本当に…魔法にかけられたんだ。
王子ドラケン…自国と民を守るために最前線で奮闘してた……カッコ良かったな。
翌日、城では王子ドラケンが昨夜の舞踏会での出来事を側近に説明していました。
「階段にこの草履が落ちてたんだ」
手にはあの時の草履が握られています。
「この草履はいて核弾頭みてえなキックが出来る奴が…昨夜の抗争の勝者、オレが探してる相手だ」