第1章 シンデレラ
マイキーは、誰にも言えなかった苦しい環境を話して聞かせました。
「なるほどな……けど、生まれた環境を憎むなよ?」
「ああ…分かってる。それはいいんだ。それより俺には夢があるんだ」
マイキーには、いつも思い描いていた夢がありました。
「今って、不良がダセェって言われる時代だろ」
「ああまあ…そうだな」
「俺が不良の時代を作ってやる!」
マイキーは、胸に秘めた自分の夢を熱く語ります。
「この国の偉い奴らにそれを見せてやる!」
「そこまで気合い入ってんなら、オレが魔法をかけてやるよ」
マイキーの熱に心を打たれた三ツ谷が手にしたステッキを振ると、マイキーの灰まみれのボロボロの服が甚平に、キッチンの隅に転がしておいた特大サイズのお化けかぼちゃがバブに姿を変えました。
「何だこれ…すげえな!それにこのバイク、かっけえ…!」
マイキーがバブに手を触れ目をキラキラさせています。
あまりに嬉しそうに撫でるものだから、三ツ谷も自分の魔法が誇らしくなり得意気に提案してみせました。
「髪もセットしようぜ。ハーフアップにしたらどうだ?」
「出来んのか?」
「おう、出来るぜ。あ、可愛い可愛い」
こうしてマイキーの身支度と出発の準備が整い、いよいよお城へ向かうこととなりました。
「今夜の舞踏会には東京卍国の王子が顔出すって話だ。まずは王子に会ってみたらどうだ」
「おう。ありがとな三ツ谷!」
王子がいるというパーティー会場へバブで向かいます。夜の道を一人駆け抜けるのは、とても気持ち良くて爽快な気分でした。
「でけえ建物だな…」
辿り着いた城は、間近で見るととても大きくて豪華なものでした。圧倒されつつパーティーホールへ足を進めます。
そこでは大勢の舞踏会の招待客が、お酒を飲み食事を楽しんでいました。皆思い思いの衣装で着飾って来ています。
彼らは、つかつかと中央へ歩みを進めるマイキーにどよめきながら視線をちらちら送ってきました。
「…甚平でパーティーに来る奴初めて見たぞ」