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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完





対バンの当日、ライブハウスの楽屋前で会った相手のバンド達の顔は酷くやつれていた。
あの曲が相当ヒットしたらしく、音楽番組や雑誌のインタビューなど多忙の生活を送っているらしい。
「……今日はよろしく」
美丈夫だった男の顔も、この数ヶ月で一気に老け込んだように思える。
手を差し出されるとオリオンが握り返した。
「今回も僕らは新曲で挑むよ。今最もMIDICITYの頂点に近いバンドとはいえ、きっとこの曲には勝てないと思う」
「悪いが俺たちも新曲を準備していてな、そう負ける気はしないんだ」
相手のバンドの新曲という言葉に顔が歪む。
この不敵な様子はきっとまたーー
ふとドラムの男に視線を向けると、随分と青い顔をしている気がした。
「ーおい、大丈夫か?」
その様子に少しだけ心配になり、声をかける。
「っーーーああ…」
いくら多忙とはいえ、こんなやつれ方あり得るだろうか?
「みたかよアイツら!あんな青い顔して今にも尻尾巻いて逃げ出すんじゃねえか!?」
「体調悪いんじゃないの?よく今日の対バン辞退しなかったね」
相手の様子がおかしいことに皆気づいたらしく不思議そうな顔をする。
先に演奏するのは向こうの方だ。新曲もあると言っていた。
楽屋のモニターを見上げると、そこには既にスタンバイをしているあいつらがいた。

「まずはーーーーーーーー」

ボーカルの透明感のある声がスピーカーから漏れる。
「ーー様子見、といったところか」
オリオンが呟く。
会場のボルテージも上がり間も無く曲も終わろうとするところで、ドラムが調子悪そうに胸を抑えていることに気付いた。
「やっぱり、随分と調子悪そう」
セレンのその言葉に同意する。
「アルカレアファクトさーん、スタンバイお願いしまーす」
スタッフに声をかけられると、舞台袖に行こうと席を立った。



「それでは聞いてください、二曲目は最近のーー」
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