第1章 チタンパート 完
再び目が覚めるとソファーで横になっていることに気がついた。
下には布団が一組敷かれ、弟達が二人並んで寝ているのが目に入る。
視界の中にあるローテーブルの上には、柔らかめに炊かれたごはんとたくあん、味噌汁と小鉢がラップをかけて置かれていた。
弟達を起こさないようにゆっくりソファから起き上がり、テーブルの上のご飯のラップを外す。
そこで横に俺のスマートフォンが置かれていることに気がついた。
「……ヒロインさんを呼んでくれたのか」
冷たい手。
触れられた額に手を当てる。
けれど優しい手だった。
「流石チタンだ。ここまで素晴らしい曲ができるとは……」
行き詰まっていたのが嘘かのように、翌日には曲が完成していた。
「正直今までで1番手応えのある曲だ。その分難易度も跳ね上がるが……」
練習期間は短い。けれど完成すればこの音は美しく鳴るだろう。
「おいおい俺達を嘗めてるのかチタン」
アルゴンはそう言うと呆れたように笑った。