第1章 チタンパート 完
家への道中、あまり寝ていなかったのが応えたのか視界が酷く歪んだ。
「お帰りなさいお兄様!」
「今日ははやかったんだね!」
「ただいまバルト、ニケル。晩御飯は食べたか?」
まだという二人に今日は俺が晩御飯作るよと言うと、嬉しそうに声を上げた。
段ボールに入った野菜を取り出し、まな板の上に乗せる。
包丁で玉ねぎを切ろうとすると、再び視界が歪み、立っていられなくなる。
たまらずしゃがみ込むと二人の悲鳴が聞こえた。
ニケルの鳴き声が聞こえる。
大丈夫だ、今晩御飯作るからな。
二人の声が徐々に遠くなり視界が暗転すると、気持ち悪さと共に意識を手放した。
「寝不足みたいだから、ゆっくり寝かせてあげよう。大丈夫、起きたらまたいつものお兄さんに戻ってるよ」
「ーーー本当?お兄様大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。むしろそんな泣き顔の二人を見たら、お兄さんびっくりしてまた気絶しちゃうんじゃないかな?二人ともご飯まだでしょう?」
「まだです」
「まだー」
「じゃあ二人ともお手伝いしてくれる?まずは汚れた布巾とかお洗濯して、その後は床のお掃除」
二人の声が遠ざかっていく。
「………全く、弟達に心配させるなんて君もまだまだ子供だね」
額に冷たいものが触れる。
「対バン、するんだってね。そんな無茶して……バカだなあ」
その冷たさがゆっくり離れていくと、側にいた気配も遠ざかった。
ゆっくりと目を開いてみると、彼女の背中が見えた気がした。