第1章 チタンパート 完
譜面がある程度でき、一通り弾いてみるもののこれではダメだと握りつぶす。
その様子にアルゴンもセレンも心配そうに見ているのがわかるが、応えることもせずに再び新しい紙を出した。
「おいおい大丈夫かよチタン、対バンは半月後だろ?そろそろ曲を完成させてくれねーと練習する時間も無くなっちまうよ」
ダメだ。この曲じゃあの人の曲に勝てない。
ピアノの音を鳴らしていくが、見つからない。
「チタン、スランプ?」
この対バンが何を意味するものなのかわかっているオリオンは、何も言わずにアイスティーを口に含んだ。
勝たなければ、意味がないのだ。
「今日はもう遅いし、一回家に帰った方がいいんじゃねーの?弟くんたちも心配すんだろ」
「アルゴンが人の心配するのは意外だけど、それは同意見。オリオンも今日は解散でいいよね?」
「そうだな。徹夜はいい仕事の天敵だ。今日は解散としよう」
それじゃあとアルゴンとセレンが出ていくのを見送り、俺も帰ろうと立ち上がる。
「チタン」
オリオンに視線を向けると、心配したような顔でこちらを見ていた。
「勝てる曲を作れと言ったのは俺だが、あんまり根を詰めすぎるなよ。お前今、随分酷い顔してるぞ」