• テキストサイズ

【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完



「あ、おはようチタンくん、急にごめんねー」
「いや、大丈夫です、着替えてきます」
一度自宅に戻り服も着替えたところで出勤する。
タイムカードを打刻するその横目で、ヒロインさんがベースを解体してるのを確認する。
タンクトップにエプロンと、見る人から見れば扇情的な格好をしていてエロスささえ感じさせられる。
肩に彫られたタトゥーが、また彼女の不思議な魅力を引き立てる。
ふと歌詞になりそうなフレーズが浮かぶものの、バンドのイメージに合わないと直ぐに思考をかき消した。
「引き継ぎは昨日と同じ。会員様限定で3969円以上お買い上げのお客様に抽選券渡してあげて。それと手が空いてたら昨日割れシンバル買い取ったからカッティングお願い」
「わかりました」
普段着の青いシャツの上からエプロンを着ける。
楽器店とだけ書かれたデニムのエプロンは簡素なもので、直ぐに売り場に移動する。
売り場を軽く見歩くと、今日発売されたばかりのアルカレデザインのウエハースに気がついた。
あちこちで売り切れているというのにほんの少しだけ出てて売れていないのを見ると、今日もお客さんが来ていないことが見て取れる。
案の定、誰もいない。
それでも此処が潰れないで、俺も仕事を探さないで済むのは、店長とヒロインさんの手腕なのだろう。
このメディアの時代に乗り、オンラインで格安で楽器の修理を行っているのが、収入源だと前に店長に聞いた。
それができるのも、ヒロインさんの腕がいいからなのだろうが。
品出しするものも特にないとレジに戻り、割れたシンバルを手に取ると、側に集荷と貼られたギターが5本かけられていることに気づいた。
「これ、今日送るやつであってますか?」
「んー、もう集荷の連絡はしてあるからそのうち来ると思う」
その直後、直ぐに運送屋の挨拶の声が店内に響いた。
ギターを渡し、追跡番号を受け取る。
「発送連絡しときますか?」
「お願いー」
カウンターのパソコンを立ち上げ、お客さんにメールを送ると、俺はシンバルの修理をしようと道具の準備を始めた。
/ 76ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp