第1章 チタンパート 完
「ダメだよ、こんな曲じゃ」
譜面がゴミ箱に捨てられると、目の前の男は貧乏ゆすりをしながら爪を噛んだ。
「そんなっ……一から作り直しなんて間に合うわけない」
「ダメだ、もっとこう……今までとちがう……耳に残るような曲が」
「どこがダメなんだよ。今までで1番いい出来じゃねえか」
「違うんだよ!!俺たちはメジャーデビューするんだぞ!!1stアルバムに……全部を載せないと……」
「ふざけんなよ、お前ヒロインが作った曲を……」
「……いいよ、曲、もう一曲作ってみるよ」
仕事が終わって、曲を書いていく。
忙しい中彼に触れる時間もなく、空いた時間で曲を書いた。
妹達の為に。
メジャーデビューすればもう少し、あの子達のにいい暮らしをさせてあげれるかもしれない。
「………どうして」
そんな時、彼が浮気をしているなんて思っていなかった。
ようやくいい曲が出来てと彼の家に足を運ぶと営んでいる二人に遭遇した。
「草臥れた君より綺麗な彼女の方に気持ちが向くのは……当たり前のことだろう?」
嫉妬というよりも呆れの方が先に出た。
そして全てがどうでも良くなった。
「いい曲じゃないか。これなら……」
「馬鹿みたい」
裸で抱き合う二人の前で譜面を破り捨てる。
私は彼に恋をしていた。
恋をしてたからこの人の為に曲を書けていた。
それがなんだというのだ。全てがバカらしくなってしまった。
「私は抜けるよ。あとは3人でデビューでもなんでもすればいい」