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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完








預かっていた合鍵で玄関を開ける。
中からはおもちゃのピアノの音が聞こえ、三人の合唱の声が小さく響いていた。
「ーーーうみーはとおとしー………」
優しい音色に耳を傾けつつ、音の鳴るリビングへと近づく。
扉を開くと、ヒロインさんの膝に座ってピアノを習うバルトと、寄り添いながら歌うニケルに1日の疲れが吹っ飛んだ気がした。
「一日面倒見てもらってすみません」
「お兄様!僕海峡弾けるようになったんですよ!」
バルトとニケルが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「あのね、おねえさんのごはんすごくおいしいんだよ!」
「今日はお昼にナポリタンスパゲティを作ってもらったんです!!」
そういう二人を見て、優しそうに笑うヒロインさんに一瞬どきりとした。
「晩御飯作るから、三人とも食べて帰りな」
「あ、ありがとうございます」
「座ってまってな」
立ち上がった彼女の左肩に描かれたタトゥーが目に入り、思わず視線をそらす。
先程見たホームページ、そのボーカルの右肩には同じ模様のタトゥーが入っていた。
バンド仲間同士同じ柄のタトゥーを入れることは珍しくない。
「手伝います」
別にいいのに、という言葉を無視して台所に行くと、水のピッチャーとコップを用意した。
その間にヒロインさんは玉ねぎを切り、コンロの鍋に水を入れて火をつける。
ちらりと見たのがバレてしまったのか、ヒロインさんと目が合うと苦笑いされた。
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