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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完


「そんなにタトゥーが気になる?」
「え、いや……いえ……その」
撫でられたタトゥーが痛々しく見える。
「……前にいたバンドのボーカルと付き合ってて、お揃いで入れたんだ」
「付き合って……た?」
「もう別れたけどね。そいつベースと浮気しててさ……ベースも私とボーカルが付き合ってるの知ってて手を出したみたいで馬鹿馬鹿しくなっちゃって脱退したんだ」
鼻で笑う彼女に、なんて言葉をかければいいのかわからなくなる。
「そのベースも、亡くなったんだけどね」
「…知ってます」
「私が脱退した後だったんだけどね、元彼に轢き殺されたらしくてさ。500メートルくらい意識があるまま引き摺られたって聞いて……正直ザマァ見ろって思っちゃったんだ」
小さく、でもハッキリと申し訳なさそうに呟くヒロインさん。
沸騰した水にだしの素を入れる。
「……なんて、何話してんだろうね。こんな話しされてもどう返せばいいか困るよね。ごめんごめん」
次いで玉ねぎを入れると、熱いダシが跳ねたのか顔を歪めて腕を引いた。
「っつー……」
「早めに冷やさないと跡になりますよ」
「これくらいなら大丈夫だよ。ほら、チタンくん水持ってそっち行ってな」
白い腕に、赤い跡が痛々しく浮かんでくる。
「ダメですよ。ほら」
濡れた綺麗なふきんで患部を掴むと、思ったよりも華奢なそれに驚いた。
少し力を入れたら折れてしまいそうな程に細い。
「いいって。そんなんやってたら晩御飯遅くなっちゃうし」
俺の手から、ヒロインさんの腕が抜ける。
とくとくと心臓の音が速くなるのがわかった。
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