第1章 チタンパート 完
「バンドのこと、言いましたっけ?」
「いや、でも流石にわかるよ」
バレている気はしていたが、やっぱり隠しきれるものではなかったらしい。
「いつから」
「うちに入ってきてわりと直ぐかな。ピアノを弾く人の手だし、ブルーユニコーン族だし希望休は大抵ライブの日だし……一応贔屓してアイテムとかも入れてるつもりだよ」
そういえば、売り場でアルカレアファクトの新商品は必ず発売日当日に入っている気がする。
「弟くんたちが寝てるうちは無理に起こさなくていいよ。うちでゆっくりしていきな」
そう言うと、ヒロインさんはリビングを出た。
「コーヒーでいい?」
「あ、はい。大丈夫です」
すぐにマグカップを一つ持って現れる。
「私はタバコ吸ってくるから」
カップを俺の目の前に置いて、今度はベランダに向かう。
窓からはshibuvalleyのじっとりした空気が入り、少し遅れてタバコの臭いが鼻腔を刺激した。