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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完




「ライブおつかれ。とりあえず上がりなよ」
バイト先の二階へと続く階段を上り、扉の前のインターホンを押すと直ぐにヒロインさんは出てきた。
仕事中とは違い、化粧気のない顔だがそんなに大きく見た目が変わることもない。
本人はそんなことどうでもいいらしく、さっと俺を家に上げると、狭い廊下を通ってリビングに案内された。
「二人とも病院に連れて行ったけど、ただの風邪だって」
「二人?バルトもですか?」
「うん。突然店に来てさ、"お兄様に連絡取れませんか"って下の子背負いながら。上の子も顔真っ赤で心配だったから……保険証は本人が持ってたし」、
気づかなかった。バルトまで調子を崩してたなんて。
「今は薬飲んで二人してよく寝てるよ」
「すいません、いくらかかりました?」
「別にいいよ。普段からチタンくんには店のこといろいろお願いしちゃってるし」
リビングの隣にあるのか、寝室の襖が開かれる。
するとそこには、一枚の布団で寄り添って眠る弟たちの姿が見えて胸をなでおろした。
「チタンくん、こんなこと聞いちゃ悪いけどそんなにご両親の借金って凄いの?熱の弟を放置してまでライブしなきゃいけないくらい」
「……ええ。正直ライブで稼いだサウンドルで借金を返済していくしかないんです。生活費はバイト代だけ……今住んでるところは格安のアパートですけど、前まではマンホールの下に住んでいたんです」
「その、ご両親は?」
「メロディシアン鉱山で強制労働してて……」
「そっか、それは……」
するとヒロインさんは何かを考えるように口を噤んだ。
「………毎回はこっちも困るけど、今回みたいに熱があるとか、……ツアーでどこか行かなきゃいけないって時はうちに預けていきなよ」
「い……や、それは申し訳ないですし」
そこで、ふと俺はあることに気づいた。
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