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【SB69】レディ・レディ[オムニバス]

第1章 チタンパート 完




会場入りし、リハーサルも終わったところで、スマートフォンに連絡が入っていることに気がついた。
知らない電話番号。3時間前に、連続して入っていて、その次にはバイト先からの電話が一件。
今日は定休日で、店の二階に住んでいるヒロインさん以外ありえない筈だと思いながら、スマートフォンをポケットに仕舞う。
どうせ明日また誰かが休みだから代理で入って欲しいとかそんなことだろうと思っていると、再びスマートフォンが震えた。
今度は知らない電話番号。
出ないでいると、留守電が入った。
『ーいきなりごめん、チタンくんの電話であってる?楽器屋のヒロインなんだけど………チタンくんの弟って子たちが来てるから、時間ある時連絡ください』
この電話番号は、ヒロインさんのだったのかと思いつつも、突然の弟の話題に戸惑った。
バルトとニケルが、あそこに?
急いで折り返しかけるものの、ヒロインさんは電話に出ることなく虚しく機械音声が響いた。
「おいチタン、そろそろだぞ」
オリオンから声をかけられる。
「あ、ああ」
焦るものの、出番は近い。
スマートフォンをポケットに仕舞うと、俺はステージへと向かうことにした。





ライブ終わり、外に出ると雨が降っていた。
スマートフォンを取り出すもののヒロインさんからの連絡はない。
再び電話をかけると3コール目でコール音が消えた。
『もしもし』
「チタンです」
『あ、お疲れ。今から店にこれる?電話で長々話してもさ』
「行きます」
通話が切れ、急いでタクシーを拾う。
普段であれば勿体無いと使うことはないが、今回は緊急だと揺れる車内で自分に言い訳してみる。
「すいません、shibuvalleyの××まで」
運転手が小さく返事し、外の景色が動き出す。
焦っても仕方ない。ライブの光で疲れた目を閉じると、ふと最近あまりまともに眠っていないことに気がついた。
このライブの準備と、バイトの掛け持ちでしばらく忙しかったから。
少しくらいならいいだろうとそのまま伏せていると、いつのまにか意識は闇の中へと溶けて行った。




「……ぃさん、おにいさん!」
男の声に驚き、目を開ける。
「…はい」
「ぐっすりだったね。ついたよ」
「あ、すいません」
料金を聞いて支払いを済ませる。
タクシーをさっさと降りると、それは直ぐに繁華街の方へと向かって行った。
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