第10章 ホットチョコレート【岩泉】
「よし、帰るぞ」
そう言われて差し出された右手に私の左の指を絡ませる。
やっぱり、久しぶりすぎて
なんだか変な緊張
「手冷たくね?てか手袋は?」
「忘れた」
「お前なぁ」
呆れながらも私の手も一緒に
はじめくんのダウンのポケットにお邪魔させてもらって
「でも、ホットチョコレートすごくあったかい」
「もう風邪引くなよ?」
「うん。はじめくんが迎えにきてくれたし、
はじめくんの手もあったかいからもう引かない」
「なんだそれ。
てかもうタクシーで帰るぞ」
そう言いながら、
はじめくんがタクシーを止めて
なんか本当に久しぶりで
あれ?前は何話してたっけ?
相変わらず、普段はずーっと私が話してるのに
あまりにも突然のはじめくんの登場に、
心臓がドキドキドキドキ
どうしても追いつかない。
そして緊張すると
"いつも通り" がわからなくなってしまうのも相変わらず。
…………タクシーだと家までわりとすぐなのに
なんか、遠いなぁ。
二人とも無言のまま、
流れる景色を眺める。
ホットチョコレートをひと口
甘さがほっと私の中に広がる。
そして相変わらず繋がれたままの左手から
じんわり熱が滲み出す。
それがはじめくんの、
来週まで会えないと思っていた
大好きなはじめくんの熱だから、
やっぱりどうしようもなく嬉しくて。
心臓のドキドキは未だ鳴り止まない。