第1章 リップ【国見英】
「だから髪なんか巻いてるの?」
「だって少しでも可愛くして行きたいし……」
なんて言ってみたけど、
変だと思ってるのかな。
「…………そのリップも似合わない」
「そんなにハッキリ言わなくても…………」
好きな人から、この言葉はキツいなぁ。
さすがに泣きはしないけど、
思わず視線は下がる。
ベッドに座っていた英くんがこっちに近づいてきて、
テーブルにメイク道具を広げたまま座っていた私の目の前に、胡座をかいて
長い腕がこっちに伸びてきたと思ったら
グッと、
親指で唇を拭われる。
「………とれないじゃん」
「だってそういうリップだし………」
英くんの親指が突然唇に触れて、動揺。
だけどそんなことはバレちゃいけないから。
「じゃあ、キスしてもうつらないの?」
「………え?」
「試していい?」
私は今「試していい?」って聞かれたはずで、
それに対して「絶対にダメ」って答えるはずだったんだけど
英くんが質問したのに、私が答える前に
唇が触れる。