第6章 苦く、焦がれる【宮侑】
こんな醜い欲は隠して、何事もないように会う。
もういつからこんなことしてるのかわからないから、
それは至極当たり前で
「侑、あれ?髪切った?」
「おん。色も変えた」
前髪をくるくると触りながら
そう言う侑の髪の毛をさわる。
「そうなん?全然わからんわ!」
幼馴染みとして、
違和感がないように。
こうやって欲求を満たす自分は
他人からみればひどく滑稽なんだろうけど、
もうそんなことはどーでもええし。
「俺、いつまでの荷物持ちするん?」
まだ何もない両手をポケットに突っ込んで、
サングラス越しにこっちを見る。
「うーん。とりあえず私に彼氏ができるまで?」
侑以外を好きになることなんて
ないと思うけど。
だって今まで何人かと付き合ってはみたものの、
やっぱりあかんかった。
だけど、そういう私に
早く彼氏つくれって返ってきて。
うん。
これもいつも通り。
別に想定内。
私たちは隣同士が一番自然
こんなにも近い。
だけど、埋めようのないこの数センチが
たぶんもう、変わることはない。
だけど、それでもええ。
きっと私はいつまでも、侑に恋い焦がれる。
決して甘くなんてない、
苦くて苦しい味やけど。
それすら手放せない
どうしようもない私は
お願いやからこれからも
幼馴染みとして侑の隣で笑っていさせて?
--- to be continued ---
(2022.2.25)