第5章 帰り道【北】
「………私はこれから
何をどう頑張ったらええんでしょうか」
「何のこと?」
「いや、やっぱりコレ、
夢やないんですか?」
「何でそうなるん」
「いやだって、やっぱりおかしいですよね?!
北さんが私なんかのことをそんな風に思てくれてるなんて?!」
「 "なんか" やあらへんし、
それを言うなら俺 "なんか" が、になるやろ」
もう北さんが何を言ってるのか理解できない。
「そんな "何言うとるかわからん" みたいな顔すんな。
そんなんじゃ小論文心配すぎるで?」
「じゃあ北さんが見てくれませんか?」
「おん。ええで」
「ほんまですか?」
「当たり前や。それよりさっきの返事はくれへんの?」
「…………そんなん決まってるやないですか」
「言葉にしてくれんとわからんわ」
「そうですね。
北さん、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくな」
「はい」
月は見えない。
だけど、どうしようもなく
月が、綺麗だ。
--- end ---
2022.2.18