第1章 リップ【国見英】
さっきまで、私の心は曇り空
いや、なんならもうすぐ雨が降りだしそうな世界だったけど
パッと光が差したような。
ふわりと花が咲いたような。
どうしよう。
幸せってきっと、こういうことをいうんだ。
「………可愛い。こっち来て?」
こっちに来いと言われても、
どうしたらいいかわからない。
そんな私を見兼ねて、
英くんが私の後ろに回ってきて
そっと、後ろから腕がまわって
抱きしめられる。
ドキドキしすぎて、死んじゃいそう。
「ねぇ、?」
「ん?」
「好き。大好き」
耳元で囁かれるその声に
「わた、しも………」
声が震える。
「俺と、付き合ってくれる?」
小学生とは違う
中学生とも違う
低く響くその声は
だけど、私も知ってる英くんの、声。
「………はい」
私の後ろには、あの頃よりも
身長がもっと高くなって、大人になって
もっともっとカッコよくなった英くん。
だけど、小さい頃から大好きだった
私の大好きな、英くん。
--- to be continued ---
(2021.2.6)