いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第10章 4年ぶりの場所
「態々ここを通らなくとも、貴方はこのビルに入る術を持っていますよね?」
『うん。拒否られたら違う方法で行くつもりだったし』
入り口から追い返したところで
沙羅は異能を使えば
一瞬でビルの中に侵入できる
それを理解している芥川は
沙羅がここを通ることを許可した
「あの、芥川先輩!!マフィア外の人間を通して平気なんですか?!」
芥川の行動に周りの者が
疑問を持つのは当たり前で
樋口がその疑問を口にした
黒服の集団の人間も
不思議そうな顔をしている
「樋口、…貴様らも、この方が誰なのかまだ判っていないのか」
さっさと行って太宰を救出して帰ろう、
とビルに入ろうとした沙羅は
芥川の言葉に足を止めた
「“桜の魔女“を知らぬ、とは言わないだろうな?」
「知ってます!!…何年か前、最強な異能を持ちながらも準幹部という立場にとどまり幹部になろうとはしなかった1人の女性…確か、その方を本気で怒らせた組織は建物の塵一つ残さず消しとばされて、本人は服の袖に汚れ一つついていなかったっていう…。それと何か関係が?」
「この方の姿をよく見ろ」
よく見ろ、と言った芥川の
視線の先には沙羅が立っていて
沙羅が何者なのか
理解していなかった人たちも
ようやく理解し始めたようだ
「白い、ロングコートに…桜色のロングヘア…紫色の瞳…」
『…ねぇ、私の噂ちょっと脚色されすぎじゃない?』
沙羅が振り返ると
真っ白なロングコートがふわりと舞った
マフィアにいた時から身につけていた
白いコート
ずっと昔から、黒ずくめのマフィアの中で
たった一人、真っ白なコートを着ていた