いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第6章 人生万事塞翁が虎。/ 闇と光
そっと後ろを振り返れば、
懐かしい人が立っていて
沙羅は思わず口角が上がりそうになる
「……それ、今でも付けてくれてたんだな」
中也が言った“それ”とは
沙羅がポートマフィアから去った日に
中也が沙羅に渡した桜の髪飾りである
中也から見れば、
久しぶりの再会がこんなんでも
自分があげた物を4年近くも
使い続けてくれていたというのは
とても嬉しい事だった
『……うん』
そう短く返事をすると中也は
沙羅を掴んでいた手を離した
ポートマフィア幹部と
話し始めた沙羅を見て、
その場にいた一同はさらに困惑していて
「芥川先輩…彼女は何者なんですか?」
金髪の女がそう問うと、
「………己の頭で考えろ」
と、短く答えた。
「真っ白なコートに……ピンク色の髪って…、もしかして…」
「…いや、真逆そんな訳ないだろ」
構成員の一部でこんな会話が
行われている事も知らず
沙羅はそっと、
その場から去って行った
『…もしいつか、ゆっくり会える日が来たら、ワインでも飲みながらお話ししようね。』
「……あぁ」
来るかどうかも判らない
“いつか”を願いながら。