いつかまた、キミと一緒に【文豪ストレイドッグス/長編】
第1章 黒の時代
「…沙羅、最近ちゃんと休んでるかい?」
『うん?休んでるよ』
沙羅は先程のあくびを誤魔化すように
きょとんと首を傾げてそう答えた
「平均睡眠時間は?」
太宰にそう訊かれて、
答えるまでに間ができる
『………………7時間。』
_______本当は3時間くらいしか寝てないけど
と沙羅は心の中で付け足した
「……はぁ、どうせ最近全然眠れてないんだろう?沙羅の嘘はすぐに分かる」
でもそんな嘘を太宰が見抜けない筈もなく
沙羅は誤魔化すのを諦める事にした
『……だって…私、もっと強くならないと…』
「沙羅はもう十分強いよ。…その心意気は大事だけれど、それでいざという時に倒れてちゃあ意味がないだろう?」
『………。』
沙羅は完全に図星を
突かれてしまって返す言葉が出てこない。
強くなる為に努力する事は大事だけど、
倒れてたら意味がない、
そんな事、とっくに分かっていることだ
「偶にはちゃんと休みなよ、沙羅」
下を向いてしまった沙羅の頭に
太宰はポンッと手を乗せた
先程まで銃を
握っていた人間の表情とは思えない
ましてや太宰は沙羅に銃を向けていた
それでも今は、
沙羅だけに向ける、
優しい表情だった
その行動に沙羅は思わず顔を上げる
もしこれがヨコハマの海の側で、
夜景の見える場所で行われている会話なら
どれ程ロマンチックなのだろうか
でも、
私達はポートマフィア
光なんて、知らない。
死体の側で行われたそんな2人の会話を、
周りの者達は、静かに見ていた