第32章 花①紅海
「…もっと、わがままになってもいいんだよ。」
遊「…」
「遊はまだ子供なんだから、もっとわがままになって、周りの大人にたくさん甘えていいんだよ。気遣う必要なんてないの。遊が思っているほど、遊の周りにいる大人たちは弱くない。だから遊1人くらい、もっと迷惑かけても、困らせてもいいんだよ。もちろん、私にも」
遊「お姉ちゃん……。じゃあ一つだけ、いや二つ。わがまま言ってもいい?」
「なに?」
遊「一つは、本当は明日一緒にいて欲しかった…」
「そうだよね、ごめんね」
遊「もう一つは…帰ってきたら一緒にお祝いしてほしい。もうその時には僕の誕生日は過ぎちゃってるけど、帰ってきたら一緒にお祝いしてほしい」
「…もちろん、盛大にお祝いしようね!」
遊「約束ね」
「うん、約束」
遊「絶対に帰ってきてね、約束したんだから」
「うん、分かったよ」
遊「お姉ちゃん、大好きだよ」
「私も大好きだよ、遊。……それじゃあ今日はもう遅いから寝なさい」
遊「うん、分かった。おやすみなさい、お姉ちゃん」
「おやすみ」
ガチャッ
は電話を切ると堪えていた涙が溢れ出してしまい、電話に片手を添えたまましゃがみ込んでしまった。
ポ「妹のようなんて思っていたが、もしかしたら俺よりもずっと大人かもしれねぇな」
ア「も遊も、2人とも優しく、自分を犠牲にしてしまう、似たような姉弟だ」
ジョ「なんとも切ないのう…」
花「を見てきたから、遊もそういう子に育ったんだろうな」
承「遊は偉いな」
皆それぞれ口にした。
すると落ち着きを取り戻したがみんなの方向を見て笑顔で言った。
「帰ったら、誕生日祝いをしてほしいんですって。誘ったら皆さん来てくれます?」
ポ「おう!いくいく!」
ア「当たり前だ」
ジョ「そんな大事な場面に誘ってくれるなんて嬉しいのう」
花「もちろん」
承「あぁ」
「ありがとうございます…じゃあみんなで無事で帰らないとですね!」
は泣き笑いのようなものを浮かべていた。