第32章 花①紅海
ジョ「、遊に電話をかけてやりなさい」
「大丈夫ですよ、きっともうあの子寝てますし…」
ジョ「かけなさい。遊は明日で何歳になるんだ?」
「6歳です」
ジョ「6歳なら、日本では学校に上がる歳じゃあないか。確かに毎年誕生日はくる。だが,6歳の誕生日は一生でたった一度だ。そばにいかせてやることはできないが、電話くらい、してあげるといい」
「おじいちゃん…ありがとうございます」
は立ち上がり、電話の方へ向かった。
そして承太郎の家へと電話をかけた。
プルルルルルッ
団員「はい、ご用件はなんでしょうか」
「あ、守屋です。弟は、遊はいますか?」
団員「はい、少々お待ちください」
「わかりました」
そして1分ほど経った頃だろうか。
懐かしい、愛しい弟の声が聞こえた。
遊「お姉ちゃん!!」
「遊…」
は声を聞いただけで泣きそうになった。しかしグッと堪えた。
「元気だった?」
遊「うん!!元気だったよ!毎日幼稚園にも行ってるし、ちゃんと約束の時間には布団に入ってるよ!今もちょうど布団に入ったところだったんだ!」
「そう…偉いね」
遊「えへへ、まぁね!」
「遊、明日誕生日だね…明日はきっと言えないと思うから、今言っておくね。おめでとう、6歳の誕生日」
遊「お姉ちゃん…ありがとう…」
電話越しに遊の涙ぐむ声が聞こえた。
きっと不安だったのだろう、いつ帰ってくるか分からない、もはや生きているのかも分からない、誕生日など覚えているのかも分からない。それでも気丈に振る舞っていた。まだ5歳の子供なのに。その不安は抱えきれないものだったのだろう。しかし,誕生日おめでとう、その言葉で安心し、胸に秘めていたものが溢れ出してしまったのだろう。
「帰ったら、なんでも好きなことしてあげるからね、何がいいか考えておいてね」
遊「ぐすっ…うん!わかった!!」
「………遊。」
遊「なに??」