第29章 花①メサイア
こうして2人は1つのベッドで眠ることになった。
花京院も承太郎の隣にいるから小柄に見えるだけで、男性の中では高身長な方である。ベッドの上は思った以上に狭かった。セミダブルだからまだいいもののシングルであったらはみ出していただろう。
「思ったよりも狭い…」
花「そうだな…やっぱり僕は床で…」
「いいの、いて」
がどけようとする花京院を狭いベッドの中で引っ張ったので、2人の顔は鼻が触れそうなほど近くになった。
花「ちょ…ちょっと…。!?」
「だって…。!?」
花「す…すまない…」
「ご、ごめん…」
2人は顔を真っ赤にして互いに背中をむけた。
(はぁ、びっくりした…自分から言っといて何だけど、こんなんじゃあドキドキして寝れないよ…それにしても、花京院てすごく綺麗な顔してるんだな…分からなかったや…)
花(近い…近すぎる…!!こんなんで僕は寝れるのか?むしろ床の方が寝れた気がしなくもないな…それより明日絶対にポルナレフに何か言われるな、黙らせる方法をなんとか考えなくては…)
2人がそんなことを考えながらしばらくするとの方からスゥ、スゥと寝息が聞こえてきた。
花(こっちは寝れなくて困ってると言うのに、早速寝ているな…。!?)
そして花京院がの方を向くと、もこちらを向いた。
そこにはの穏やかな寝顔、ではなく表情は穏やかだが、目から涙がこぼれていた。
花(…ここ数日間でたくさん傷ついたんだろう…守ってあげられなくてすまない…)
花京院はの涙を指で拭った。
「ん…花京院…」
そう言うとは少し笑顔になり涙を拭った手に頬擦りをするとまた静かに寝息を立てた。
花(な…なんだ…今のは…)
花京院は胸を鷲掴みされたような気持ちになった。
花(今夜だけだから、許してくれ)
花京院は心の中でそう呟くと、に腕枕をし、額にキスを落とすと抱きしめながら眠りについた。