第1章 風邪⦅宿儺⦆
冬。
ただでさえ寒いなか、 は桶に水を入れ、冷水で絞った布を宿儺の額に置いた。
『大丈夫ですか?』
「あぁ…。すまない…」
まだ熱が上がるのだろうか、宿儺の顔は赤く、瞳も熱で潤んでいる。
弱っている宿儺に戸惑いながら、 は気休め程度の羽織りを布団の上に乗せた。
囲炉裏のある部屋は布団を敷くには狭すぎるため、襖を開け囲炉裏の熱を寝室まで届くようにして、できるだけ寒くないように工夫した。
宿儺の額の布を交換しながら、新しい水を汲みに行こうと立ち上がる の腕を宿儺が掴んだ。
「…そばに居ろ」
『水を替えたら すぐに戻ってきます』
宿儺の腕を優しく離しながら は、そう言ったが「水など良い」と言われ強く引っ張られた。
バランスを崩した は宿儺の布団の上に倒れ込む形になると、宿儺は の頭を優しく撫でた。
「こうしていろ」
まだ寒いのだろうか。宿儺は布団の中で小さく震えていた。
は もぞもぞと宿儺の布団に潜り込んだ。
「??」
『一緒だと暖まりますよ』
少し狭く感じる布団だが、不思議と の体温が心地よい。
宿儺は いつの間にか眠りについていた。
宿儺が目を覚ますと、 も寝息をたてていた。
先程より熱は下がったようだ。
宿儺は額の布を取った。
『宿儺さま?』
目を覚ました は宿儺の額に手を当て、熱を確認する。
『まだ少し熱いですね』