君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第204章 204
「はい。スタジオの入っているビルの入口に落ちていたと、彼女を迎えに来たタクシーの運転手が拾って届けてくれました」
「中を拝見してもよろしいでしょうか?」
「はい。パスワード入れますね」
パスワードも知ってるんかい。
と、その場の全員が思ったが、秘密を作らないように日々心掛けている二人だ。
勿論も龍之介のスマホのパスワードは知っている。
「ふむ…怪しい番号からの着信はなさそうですが…この登録外の番号、見覚えはありますか?」
「ああ、彼女のお父さんのものだと思います。電話で連絡し合う事は少ないからって、登録していないみたいです」
刑事がスマホを見ている間に、万理がノックもそこそこにバンッと扉を開き駆け込んできた。
「…は?!」
「大神さん…」
「十くん!その様子だと…」
「はい。マンションにも、いません…。これが道に落ちてて、が故意に落として異常を知らせたんだと思います」
指輪を万理に手渡し、頭を下げる。
「俺がついていながら、本当に申し訳ありません!」
「…十くんを責められない。止めても、出ちゃうでしょ?あの子は、君たちがとても大切で、大好きだから。十くんたちは今が踏ん張り時だから、負担になることはしないって、いつも言ってるんだよ」
それでも、ぐっと握る拳は万理の悲痛な叫びを具現化している様だった。
「紡さんやIDOLiSH7のメンバーも辺りを探してくれてる。一織くんが事務所、壮五くんが寮で、もしが帰ってきたときに連絡をくれる手筈になってる」
「ありがとうございます…俺も探しに行きたいんですけど…」
「今はとにかく、無事を祈ろう」
「…はい」
ソファに座り込み、額を掌で覆いながら俯く。
想像だけでも恐ろしかったのに。
の居ない空間が、こんなにも寒く寂しいものだなんて。
「少し、そっとしてあげられませんか?」
「…そうですね。別室でもう少しお話聞いてもよろしいですか?」
「はい」
刑事と共に天と楽、姉鷺、万理が社長室を出ていく。
龍之介はテーブルにと自らのスマホ、そしての指輪を置き、それをじっと見つめるのであった。