君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第203章 203
TRIGGERの三人がダンスレッスンを開始した約20分後。
控えめなノックの後、ダンスレッスン用のスポーツウェアに身を包んだがやって来た。
「お疲れ様ー!飲み物買って来たよー!」
「!ありがとう、いくらだった?」
「差し入れなんだから気にしないのー。あ、でもお礼はちゅーで受け付けます」
「何その可愛いおねだり…」
の姿にいち早く駆け寄った龍之介は、飲み物が入った袋を受け取り、そのままの腰を引いて抱き寄せる。
そのまま頬に触れ口付ければ、唇が離れた瞬間後頭部を小突かれた。
「だっ」
「人目!」
「すみません…」
レッスンを見守っていた姉鷺の、怒りの鉄拳である。
「全く…とはいえ、が来たんなら少し休憩する?」
「まだ大丈夫だ」
「僕も、まだ体温まった程度なので」
「もストレッチしないとね」
「うん。TRIGGERのダンス、ハードだからね」
くすくす笑いつつ龍之介の腕に一度抱き着いてから、はスタジオの隅でストレッチを始める。
「、曲流して軽く踊るからストレッチしながら見てて」
「はーい」
天がタブレットを操作して流れた曲は聞いたことがないもの。
どうやら新曲のようだ。
他事務所の自分が聞いていいのか、とか、情報漏洩に当たらないのかこれは、など思ってみるものの、今の彼らは八乙女事務所ではないのだから契約には縛られていない。
あとはがこの曲を聴いて、ダンスを見て、平常心でいられるか否かの問題である。
「かっっっっこいい…ひぃ…動き激し…いや、待って…やだ…すごいかっこい…龍ーー!!天ーー!!楽ーー!!」
平常心が保てないのは予定調和。
ただのファンと化して声援を送る。ではあるのだが、手はしっかり振り付けを真似始めている。
「流石というかなんというか…」
呆れと感心が入り混じった表情でを見る姉鷺。
がこうして本番やリハーサル以外の場所でレッスンをしている場面は初めて見るが、呆れよりも感心が勝ったようだ。
「もう覚えたの?!」
「まだ大まかにですけど…でも体が動くかは別ですよ?特に龍くんと楽のパートは。歩幅が圧倒的に違いますから」