君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第22章 22
「あんまり使わないから、便利なものはそんなにないんだけど」
呟きながら、紅茶とかコーヒーはここ、ポットやカップはここ、と棚などを指さしながら龍之介はに様々なものの場所を教えていく。
「龍之介さん、なんでこんな…」
「ん?ああ…あれだけバレるなって釘刺されちゃうと、外で食事とかは難しいでしょ?だから、しばらく会うときはここが良いと思うんだ」
「確かに」
このセキュリティだ。
マスコミなど記者は入りづらいし、特定もしづらいだろう。
「俺がいない時も、来ていいからね」
「来ても、入れないですよ?」
「うん。だから…どこしまったかなぁ…一個しかないからって失くさないようにしまったんだけど…」
お湯を沸かすポットをセットしてから、寝室の方へと向かう。
残されたは、ふつふつと泡立ち始めたポットとにらめっこだ。
元々想い合っていたとはいえ、つい先ほどめでたく付き合うことが決定したばかりだ。
何もしないと約束してくれたものの、交際ゼロ日で恋人の家へ行くのはどうなのか?いいのか?ありなのか?
「あったよ。はい」
「え…え?!」
手渡されたものは、間違いなく先ほど龍之介がゲートやエントランスやエレベーターや部屋のドアを開けていたものと全く同じカードキー。
「りゅ、龍之介さん!ダメです!付き合った初日ですよ?!信じるにも程がありますよ?!」
「え?そう?」
「そうです!私がもしストーカーとかになったらどうするんですか!勝手に複製とかしたらどうするんですか!!」
「そうやって怒る子はそんな事しないと思うけどなぁ…」
「わっかんないじゃないですか!」
くすくす笑いながら龍之介は慌てるを見る。
そして、笑いを止めての手を取り、真っすぐにを見た。
「いいよ、ストーカーになったって、複製されたって」
「なん…」
「でも、そんな事ならない様に、俺はを大切にするよ。そんな事しなきゃいけないような気持ちになんてさせない。俺の全部で、を愛するって、もう決めてるから」
「龍之介さ…」
「俺の全部上げたって良い。だからっての全部貰えなくてもいい。俺が俺のすべてで愛したいだけだから」
龍之介の言葉に、はじっと彼を見上げてから口を開いた。