君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第21章 21
「今照れてるの私です…なんなんですかもー…好き…」
「俺も好きだよ」
顔を合わせ、視線が絡まる。
そのまま引き寄せられる様に、そっと唇が重なった。
「帰したくないなぁ…」
「帰りたくないなー…」
呟きながらは後ろから自分を抱きしめる龍之介を見上げ口付ける。
「取り敢えず、ご飯食べよっか。なんか安心したらお腹空いて来た」
「ん、ですね。食べましょう」
が頷いたのを見て、龍之介はそっと立ち上がり元の席に戻ろうとすれば、出入り口の他に襖があることに気付いた。
「完全個室なのになんで襖があるんだろう」
「旅館みたいに二間あるんですかね?」
「じゃあここも客室の一つなのか…な………え、え?!」
何となしに襖を開いた龍之介は、開いたそのままの格好で固まる。
「?龍之介さん?」
そんな龍之介を不思議に思ったも立ち上がり、固まったままの龍之介の隣から続き間を覗き込み、同じように一瞬固まった。
「……布団…」
「………なんで?」
固まり続ける龍之介の横で、はなるほどと頷く。
旅館でも、「そういう」サービスは無くはない。
積極的にサービスを進めるわけでは無いが、接待でも日帰り客でも布団を望めば用意する。その理由は問わない。古くから続く老舗旅館故の、暗黙の了解だ。
つまり「そういう」事だ。
「面白半分に姉鷺さんか万理さんが頼んだかもしれないですね」
「冷静だね、…」
「これでも旅館の娘ですから…」
自らに経験はないが、話は聞く。
要するに耳年増なのだ。
なるほど、と頷き、龍之介は取り敢えずご飯!と襖を締めた。
「食べよっか!」
「はい、いただきましょう」
龍之介の言葉に頷き、もまた自らの席に戻り、二人揃って手を合わせてから食べ始めるのであった。