君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第21章 21
「お食事の用意が整いました」
襖の外から声が聞こえ、二人はハッとして離れる。
が素早く自らの席に着けば、龍之介はどうぞ、と外に向けて声をかけた。
「お待たせいたしました。お食事並べさせていただきます」
色とりどりの懐石料理が並び、は、ほー、と感嘆のため息。
仲居というのだろうか、店員が下がれば小さく呟いた。
「うちの懐石より豪華なのでは…さすが高級料亭…」
「…うちの?」
龍之介の問いに、はそちらを見て微笑む。
「私の実家、旅館なんです」
「そうなんだ!…ん?京都の旅館で、……え?もしかして…」
「あ、うちの旅館ご存じですか?旅館です」
「高級老舗旅館じゃないか!」
「もー、ホテル王の息子が何言ってるんですか」
「え?あ、いや…うん、にはこれ、言っておいた方が良いかな」
「?」
が首を傾げ、龍之介は小さく苦笑して、今度は俺がそっち行くね、と立ち上がりの隣に座る。
これまで社長、姉鷺、天と楽以外に話したことは殆どない、龍之介の話。
「一応、この業界では、も知ってる通りホテル王の息子ってことになってる。セレブアイドル?みたいな」
「そうですね」
「でもそれは、母親がそのホテル王と再婚したからってだけなんだ。母親の再婚相手はホテル王だけど、俺の本当の父親は漁師なんだよ。だから俺は、ホテル王の息子じゃなくて、漁師の息子」
「漁師…だから、海が好きなんですね、龍之介さん」
呟くに、龍之介もこくりと頷く。
「うん、そうかも。父親手伝って漁に出ることもあったし…。だから俺はセレブでも何でもないし、むしろアイドルになったのは、父親の借金返済が少しでも楽になるように、弟たちが少しでも暮らしやすくなるようにって、そういう理由なんだ」
もし、がホテル王の息子である龍之介に魅力を感じているのならば、嫌われてしまうかもしれない。
そんなほんの少しの不安は、の愛らしい笑顔でかき消された。
「漁師のお父さんって、かっこいいですね!龍之介さんも漁が出来るなんて、羨ましいです!」
「え?」
「え?だって、漁師さんいなかったら、私お魚食べられないじゃないですか。お寿司も、焼き魚も煮魚も」