君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第173章 173
車は順調に水族館の駐車場へとたどり着き、二人は眼鏡をかけて車を降りる。
「運転お疲れ様!」
「ありがとう。さ、行こっか」
にこりと微笑み手を繋ぎ合った二人はふと顔を見合わせる。
「どうかした?」
「仕方ないんだけどさ?」
「うん」
「眼鏡、たまーに邪魔だよね」
そんなの言葉に龍之介は軽く首を傾げながら、眼鏡を中指でかちゃりと掛け直す。
途端、隣からひぇ、と声が上がりそちらを見れば、口元を手のひらで押さえる。
「ん?」
「カッコイイ…眼鏡かちゃする龍くんカッコいい…邪魔だけど眼鏡良い…っ」
「そんなに悶えられると嬉しいような恥ずかしいような…。でも、大分かけるの慣れたけど、邪魔なの?」
「チューするとき、たまに当たるもん」
呟きながらは龍之介に体を向け、軽く背伸びをする。
それが何を求めているかはすぐにわかる。
「当たるかな?」
「今日はどうかな?」
呟けば、龍之介はそっとに口付ける。
今回は当たらなかったようで、はくすくす笑いながら口付けを返した。
「今日は大丈夫そう」
そう言って龍之介の腕に抱き着く。
の頭を撫で、二人はまずチケット売り場へ。
「大人一枚と…学割ある?」
「うん、ある!はい、学生証です」
しっかり学生料金でチケットを買うである。
芸能人だろうが何だろうが、使えるものは使うのだ。
「はい、こっちがの」
「ありがと」
チケットを受け取り入場すれば、目の前に広がるさまざまな大きさの水槽。
のテンションが上がったのを察知した龍之介は、走り出しそうなの手をしっかりと繋ぎ直した。
「ほわぁ…水族館すごーい!」
水槽をくまなく覗き込みながら、はほわぁ、と頬を緩める。
「可愛い」
「水族館初めて来た…すごいっ」
「初めて…?」
「うん!」
生まれて初めて水族館へ訪れたというに一度は驚くものの、の生まれを考えれば龍之介は納得などしたくはないが、してしまう。
は父親としか血が繋がってない。
の家に引き取られてからは、稽古に勉強に手伝いにと遊びに連れて行ってもらったことなどなかったのかもしれない。