君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第168章 168
翌日、登校したは前方に環を見つけ走り寄った。
「環ーっ」
「んぁ?っち!」
「はよー」
「はよ。なぁ、昨日さ…」
呟きながら環はを見て、うーと唸ってからに体を向け、パンッと手を合わせる。
「…ごめんっ!きのう!」
「いーよ。環の言ってる事全部が正しいとは言わないけど、間違ってはないから。ま、すぐ手が出かけちゃうとこは、めっ!て感じかな」
呟きながらくすくす笑い、は環を見上げ、めっ!と鼻先を軽くつつく。
「っん、悪ぃ…」
「結局胸ぐら掴んだだけだからね。龍くんも反省してたよ。背景知らないのに分かり切ったように言ってごめんって」
「リュウ兄貴…ホント良い奴だな…。殴んなくて良かった」
「殴ってたら…」
呟くから何やらひんやりとしたオーラを感じ、環はそーっとを見てから顔を青ざめさせる。
「なっ、殴ってねーだろぉ?!」
「ごめん、もし龍くんが殴られてたらって考えたらめっちゃ怒りが…」
「マジ殴んなくて良かった…」
「私にとって龍くんの全てが宝物ですからね」
「まじ…リュウ兄貴うらやましいんだけど」
軽く唇を尖らせながら呟く環に、はくすくす笑い軽く体当たりをかます。
「環も、私の大切な人たちの一人だよ」
「…さんきゅ」
リュウ兄貴はたった一人で、俺はみんなの内の一人なんだよな。
のたった一人になりたいと思ったときには、には大切なたった一人が出来ていた。
別に悔しくはなかった。ただ、少し寂しかった。
伝えようかと思ったこともあった。
けれど、言ってしまえば、のこの笑顔をもう見られなくなることもわかっていた。
困らせることはしたくない。
だけど、でも、ダメなんだよな。
まだ、今も、好きなんだよな。
「今日は打合せも、その後の収録も一緒だから、いっぱい一緒に居られるね」
「ん?そーだっけ?」
本当は知ってる。
俺が、いちばん知ってる。
一緒にいられる日、めっちゃ数えてる。
「あ、そうだ。私課題提出してこなきゃ!」
「一緒行く?」
「ううん。すぐだからだいじょーぶっ!先行ってて」
あとでね!と微笑み職員室に足を向けるを見送ってから、ため息交じりに教室へと向かう。