君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第164章 164
「FSCホールって…京都の?」
「そう!奇跡的に年内で一日だけ空いてるのよ!」
とある日、マンションを訪れた姉鷺が、ライブ会場の候補を提案した。
ライブハウスを中心に、ファンの近くでライブをしていこうという方針を打ち出したTRIGGER。
だが、元が人気アイドルなだけあり、ライブハウスに入れなかったファンや、出待ちのファンが道に溢れ、周辺の道路や施設に迷惑をかけることになってしまった。
それ故に、ライブハウスでのライブ開催が難しいと言われてしまったのである。
ならば、TRIGGERがライブをするには、少しでも大きな箱を選ばなければならなくなってしまった。
「…ただ」
かと言って大きな会場は、金銭的に難しいのだ。
何の後ろ盾もないTRIGGERに、大きな会場を押さえる費用はない。
「FSCを押さえるとなると…宣伝費抜きでも何千万とかかりますよね…」
「そう。せっかくTRIGGERを大きな舞台に上げられるチャンスなのに…」
「…スポンサーを求めるしか…無いですよね」
「そうよ!のとこ…は無理ね。私もあんたを実家に関わらせたくないって言った張本人だもの」
今や姉鷺と茶飲み友達のように交流しているは、以前のCM撮影でのあれこれも姉鷺に話していた。
虎於とのことはもちろん、母親との話に姉鷺は怒り、そんな家とは関わらなくていい!と断言していたのである。
「どんな条件が来るかはわかりませんが、交渉…」
「「「ダメ」」」
満場一致のノーが出てしまい、は思わず苦笑である。
とは言え、これではライブが開催できない。
うーん、と皆で頭を抱えていれば、龍之介がふと時計に視線を向ける。
「あ、もうそろそろみんな来るよね」
「そうそんな時間か」
この日はTRIGGERが共同生活を始めたと知り、IDOLiSH7のメンバーが遊びに来ることになっているのである。
「お茶菓子準備するね」
「私はそろそろ帰るわ」
帰るという姉鷺に、は準備の手を止めて掛けよる。
「あら、見送りなんていいのに」
「お姉ちゃん見送るのは当然です」
「んもうっ!可愛いんだからぁ!」
ギュッと抱き締められ、もまた嬉しそうに笑い姉鷺を見上げる。
「スポンサーの件、私も何か考えてみます。出来ることは少ないかもしれませんが…」