君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第150章 150
あれだけ、のステージで沸いていた会場が、龍之介の姿でしん、と静まり返る。
「歓迎されてねぇな」
虎於の呟きはの耳に入ってはいるが、聞いている様子はない。
視線も、心も、全て龍之介にのみ向けられている。
『こんばんは、TRIGGERの十龍之介です。この度は急な事情で、八乙女楽と九条天がステージに立つことが出来なくなりました。二人とも楽しみにしていたのですが…大変申し訳ありません』
未だしんと静まり返る会場は、TRIGGERを、龍之介を、歓迎しているとはとても思えない空気感である。
姉鷺は今にも涙をこぼしそうな瞳で見つめている。
けれど、は祈ることを辞めた。
そんな事をしなくても、龍之介は大丈夫だ。
TRIGGERのファンは、大丈夫だ。
『俺一人で恐縮ですが、TRIGGERの新曲、歌わせていただきます』
「…応援しても、大丈夫だよね…!」
「ちゃんも、TRIGGERの応援してるって言ってた!私たちも…!」
「龍之介さーん!!」
「頑張ってー!」
「天くーん!!」
「楽ー!!」
客席から聞こえるTRIGGERへの声援に、龍之介は顔を上げ、そして微笑んだ。
もまた、袖から客席に視線を向け、頷いた。
「良かった…みんな、一緒に応援しようね!」
『TRIGGERで「願いはShine On The Sea」心を込めて歌います。聞いて下さい』
いくよ…天…楽…
「頑張れ、龍くん…」
曲が流れ、龍之介が歌いだす。
力強く、それでいてなお優しい歌声に、は真っすぐ龍之介を見つめながら涙をこぼす。
「…泣いたらあの子見えないわよ」
「姉鷺さんこそ…っ」
姉鷺と肩を並べ、二人でうるうると瞳を潤ませて龍之介を見つめる。
ああ、息が出来ないくらい愛しい。
心の底から彼を愛しく思う。
彼を愛している自分が、彼に愛されている自分が、本当に誇らしい。
やがて、龍之介が歌い終わり深く一礼すれば、拍手が起こる。
始めはまばらだったその拍手はどんどんと大きくなり、会場いっぱいの大きな拍手となった。
『…っ、ありがとう、ございました…!』
再度一礼し、龍之介は袖へと戻る。
真っすぐに、に駆け寄り抱き締めた。