君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第16章 16
翌朝、は何ともすっきりとした様子で目を覚ました。
撮影最終日。
もう少し緊張感があっても良さそうだが、程よい緊張感が今は心地よい。
「準備と、朝ごはん」
ぽつりと呟き、歯を磨き、顔を洗う。メイクはやって貰うのでスキンケアと下地だけ塗る。
髪はブラシで梳き、癖がつかない様に結ばずにそのまま。
着替えやすい服へと着替えて布団を整え、軽く荷物をまとめて外に出れば、愛しい人の姿。
「十さん」
「ちゃん、おはよう」
の声に龍之介も微笑み、に近づく。
「おはようございます!」
「いよいよだね」
「はい。良い緊張感です」
小さく頷き、二人で朝食会場へ入れば、一般客も同じ会場のようで、周りが一斉にざわついた。
突然TRIGGERの十龍之介が現れたのだ。驚かないものは少ないだろう。
「十さん、さん、おはようございます。席あちらに用意してありますので、ご案内します!」
「おはようございます」
「おはようございます。さすがですね、十さん」
「ドラマが放送されたら、ちゃんの周りもこうなるよ」
微笑みながら席の合間を縫ってスタッフの案内のまま用意された席に着く。
その間にも、スマホを向けられ写真を撮られていた。
ファンの人も龍之介ピンで撮りたいだろう、と少し離れて歩いて入れば、が離れたことに気付いた龍之介が立ち止まり振り向く。
それを何度か繰り返されてしまったので、は小さく笑い、最終的には並んで歩くことにした。
「和朝食ありがたーい」
「女優さんは朝は和食が良いんですか?」
「あ、いえ!そこは解らないですけど…個人的にお味噌汁好きなだけです」
少しばかり照れ臭そうに呟くに、思わず、かっわい……と漏らしてしまうスタッフであった。
「移動用の車が10時に着くので、余り慌てなくて大丈夫ですんで、ごゆっくり!」
「はい、わかりました」
「ありがとうございます」
スタッフは隣のテーブルで食べるらしい。
隣のテーブルは割と席が詰まっており、たちの座るテーブルには余裕が有り余っているので、何やら申し訳なく感じたが、これもスタッフ側の思いやりなのかと思い、有難く席に着いた。