君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第137章 137
「…もう一回言って。何されたって…?」
「…お昼転んだの…押されたからかもしれない…って、言いまし、た」
夜。
帰宅し、夕飯を食べ終え、お風呂前のまったりタイム。
それでもの転んだ原因が気になった龍之介が問いただせば、その答え。
瞬間、龍之介を纏う空気がピリついた。
その雰囲気に、は思わずソファの上で正座である。
「……誰かわかる?」
「女性スタッフさん、だったんだけど…機材持ってたからわざとじゃあないと思いたい、は思いたいんだけど…」
「でも、目の前でが転んだのに助けるどころか声もかけなかったんでしょ?」
「急いでたのかも…?」
咄嗟によけたから大丈夫だったが、実は手も踏まれかけた。
しかし、それを言ったら龍之介はスタジオに乗り込んでしまうかもしれない。
故にここは黙っていることにした。
怪我してないからセーフという事にする。取り敢えずは。
「」
「うん。正直、ちょっとびっくりはしてる。特に歌手デビューしてから、TRIGGERとの絡みが増えて、幸いにも好意的な意見の方が多いけど悪い話もちらほら聞こえてきてたから。だから多少なり覚悟はしてたんだけど…」
TRIGGERとの絡みだけではないと思う。
の突出しすぎていると言っても過言ではないその才能は、羨むものからすれば妬みや嫉みに変わっていってもおかしくはない。
出る杭を打とうとする思考が働くものだっているだろう。
純粋に、露出が増えれば増える程、を好む者が増えると同時に嫌う者も増えるのは当然と言える。
ただ、に関しては後者が圧倒的に少ないとも感じていた。
だから今日、今、この話を聞いて心底驚いたのも事実である。
「怪我はどう?」
「ちょっと膝に痣が出来ちゃった。でも撮影問題なかったし、動きも全然」
「姉鷺さんが、大爆笑してたって言ってたけど」
「姉鷺さんに心配かけるわけにいかなかったでしょ?まぁ、ひっさしぶりに転んだから面白くなったのも事実だけどさ」
呟きながら部屋着のズボンをたくし上げ膝を出せば、愛らしい膝小僧が青くなっていた。
「痛そう…」
「触らなきゃ痛くないよ?ダンスもジャンプも出来たし、少なくとも骨は大丈夫そう」
「大事にならなくて良かったよ…。あ、湿布張ろうね」
「はーい」