君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第13章 13
「根性あるのね、ちゃん」
後ろから声を掛けられ万理が振り向けば、そこには姉鷺が立っていた。
「プロ意識はデビュー前から高かったみたいで。キス、初めてだけどこれも女優としては本望って、言ってました」
「初めて…」
「ファーストキスが十くんのようなトップアイドルだから、その点は良かったかもしれないですね」
「私たちは別の懸念が生まれるけど」
「…確かに」
彼らの言う懸念。それは、熱愛発覚などのスキャンダルである。
姉鷺も万理も、すでにと龍之介はお互い思い合っていることをほぼ確信している。
ただ想いを伝えていないだけで、言葉にしてしまえば二人の仲が一気に進展するのもわかっている。
恋人同士の役だからこその、疑似的な感情であって欲しいと願っていたが、どうにも彼らの様子を見ている限り、疑似的な感情ではなく、本気で思い合っているようだ。
「徹底的に合わせないようにすることもできるけど、このドラマ、ちゃんの演技力、龍の役のはまり具合を見てると、これからも共演は多そうなのよね」
「しばらくは番宣で一緒に色んな番組に出るだろうし…」
「オファー来てる?」
「個人ではまだ数件。番宣関連だと姉鷺さんもご存じの通り、現在13件来てます」
「そうね。朝から夕方までの情報番組、バラエティ…一日中私も見てられないし」
「俺もそうですね…」
思いっきり頭を悩ますマネージャー二人。
その間にも、着々と撮影の準備は進んでいた。
「そろそろ本番行くよー!」
「はーい!」
「はい!ちゃん、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします、十さん」
二人の声の掛け合いに、バッと視線を向ける姉鷺と万理。
「今、龍…ちゃんって言った??」
「いいました」
「…いつの間に…」
「キスシーンで照れるだろうからって、目離すんじゃなかった…!」
「ちょっと、対策を講じないと…」
「ど、どうします?!」
「言って聞くかはわからないけど、とりあえず厳重注意してみるわ。ただ…意外と頑固なのよね…」
「うちもです…」
それもプロとしての意識の高さ故かもしれないが、それにしては惚れっぽすぎないか。
なんてことを言っていても仕方がない。