君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第99章 99
「ようこそおいで下さいました、十様、様。本日は当旅館をご利用いただき有り難うございます」
車を降り、エントランスにつけばそこには既にスタンバっていたのか、仲居と女将が総出で出迎えてくれていた。
そのままフロントへと案内され、チェックインの手続きである。
「お部屋の方でございますが、八乙女社長より最上階の特別室をご予約いただきましたので、そちらへご案内させていただきます」
「とくべつしつ…」
「さすが」
「何で私?」
「社長のお気に入りだから」
そういえばそんな事を言われた気がする。
「会うたびに、は元気か?って聞かれるよ」
「八乙女社長…田舎のおじいちゃんみたい」
の言葉にうっかり吹き出しそうになったところを、咳払いで何とか抑える。
そんな二人の様子を微笑ましく見守っていた女将が部屋への案内を買って出てくれた。
「お荷物お預かりいたします」
「ありがとうございます」
キャリーを仲居に任せ、女将が先頭を歩く。
「様はご実家があの旅館ですとか」
「あ、はい。ですが、はこちらの様に洗練されていなくてお恥ずかしいです。とても素敵なお宿ですよね、こちら」
「恐れ入ります」
近頃大改装したというこの旅館は、レトロな雰囲気のあるの実家より新しく、その内装やインテリアも旅館というよりかはホテルに近いものがあった。
それでも海外からの客も喜ぶような和風のテイストで、程よいバランスの和洋折衷となっている。
「こちらが本日お泊り頂くお部屋になります」
エレベーターで上がった最上階。
上がった先には客室のドアは引き戸になっており、数は二つほどしかない。
その一番奥の一室の前に二人は案内された。
「どうぞ、こちらが特別室にございます」
「わぁ…すごーい」
居間となる手前の部屋の座卓の前にはローソファ。
石造りの暖炉が置かれ、目線を奥へと送れば坪庭と共にこれまた石造りの露天風呂。
洗面と脱衣所が別で置かれ、朝の準備も悠々とできそうである。
襖は開かれており、奥にはキングサイズのローベッドが二つ並び、その奥にはあの旅館によくあるスペース、広縁があるのだが、その奥にまた小さな坪庭が置かれ、鹿威しの置物が置かれていた。