君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第10章 10
龍之介のため息より少し前、も束の間の撮休日というのに、寮のリビングで万理から届いたメールを片手にバッタンバッタン暴れていた。
「嘘でしょ?!!わー!うわあー!!!」
「なになに?!!泥棒?!!」
「どうした?!」
暴れまわるの元へ駈け込んで来たのは、陸と大和。
たまたま二人とも仕事の空き時間だったらしい。
「あ…ごめん、我を忘れて暴れちゃってた…」
「お前さんが我を忘れるのは撮影の事だろうとは察するけど、何があった?」
本格的に撮影が始まってから、は現場ではNGもごくわずかで、そつなくこなしてはいるものの、寮に帰ると気が抜けるのか、感情のまま突っ走ることが多かった。
突然泣き出したり、かと思えば、周りの声も届かぬほど集中していたり。
それが周りのメンバーの迷惑になるかと言えば、そうでもないのだが、みな、の撮影期間は温かい目で見守ろうとそっと心に決めた。
「先ほど、明日の撮影について変更メールが来まして」
「ほう、まぁドラマではよくあるわな」
「はい、一部シーンの変更なので大きな変更ではないんですけど、その…内容が…あああああ…」
「落ち着けー?内容が?」
「台本ではハグなのに!キスシーンがプラスされてた!!つまり…」
「つまり十さんとちゅーするってこと?!!」
「はっきり言わないで恥ずかしいから!!」
陸の大きな声での指摘には陸をビシッと指さす。
「ほぉー?まぁ、ありがちと言っちまえばありがちな変更だよな。万理さんはなんて?すなわち事務所の方針としては?」
大和の問いに、は変更を知らせるメールの後に届いた万理からのメールを表示させ、すっと差し出す。
【がんばっ☆】
簡潔である。
「が、がんば…」
「頑張りますよ!プロだし!仕事だし!!でも!マネージャーってこういうのもうちょっと慮るものなんじゃないんですか?!万理さんに甘えすぎ?!それとも万理さんにこんなん求めるのが間違ってる?!」
「あー…まぁ、間違ってはない…」
「ちゃんなら問題なくやれるって思ってるんだね、万理さん!」
陸のその言葉に、はうーむ、と小さく唸ってから頷く。