君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第90章 90
「私の為に、自分やTRIGGERを疎かにしないでね」
「…それは、簡単に約束できないかもしれない」
「約束して。私が死にかけてても、何がなんでも、TRIGGERと自分を優先して」
「…」
「そんな簡単に私はどうにかならないから。龍くんが傍に居ない時も、龍くんが私の心に寄り添ってくれて、私の事思ってくれてるの、知ってるから」
その声音は、心から龍之介の想いを受け取って安心してくれている様な、そんな音を奏でていた。
が龍之介からの無償の愛を少しずつ、少しずつ受け止められるようになり、やっと何の気後れも感じることなく、ただ浴びるように愛を受けていいのだと思ってくれるようになったのだ。
「…わかった。でも行けるときは絶対に傍に行くよ。それも俺の愛」
「私も絶対に行く。龍くんの傍にずっといる」
微笑みながら見上げてくるのその笑みは、いつも通りだけれどいつもより何倍も愛らしい。
「キスしていい?」
「ダメっていうときは一生来ません」
「可愛い」
くすくす笑いながらそっと口付ければ、唇を軽く噛まれる。
それを合図にの唇を舐めれば、から口付けを深めてきた。
「っ、んぁ…」
「はぁ……」
の後頭部に掌を這わせ、龍之介はの唇を貪る。
「大好き…りゅ、ぁ…ん」
「俺も、ん、好き…早く着替えて、帰ろっか」
「ん。そ、する…ん…っ」
いつまでも離れたがらない二人の唇はノックの音でやっと離れる。
「…お邪魔だった?」
「いえ、だいじょ…じゃない!グロス!」
「…あ」
の唇に残っていたグロスはしっかりと龍之介の唇に移っていた。
龍之介が自ら唇を親指で拭えば、そこにはラメが光る。
しまったなぁ、と苦笑しながらを見れば、口元を押さえて机に突っ伏す姿。
「?!」
「か…かっこいい…親指で唇拭う龍くん世界一カッコイイ…しゅき…」
あ、いつもの発作ですね。
龍之介と万理は、揃って頷く。
「なんか、すみません」
「いつものことだから。十くんも大変だね」
「いえいえ、可愛いだけです」
苦笑する万理に龍之介もまた苦笑を返す。
相も変わらず、平和な三人なのであった。