君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第88章 88
とうとう、この日が来てしまった。
「、大丈夫?」
「大丈夫では…ないです」
都内某所スタジオ。
その楽屋にて、はガチガチに固まっていた。
「いやぁ、まさか発売日に生放送で歌披露とはねぇ」
呑気に呟く万理に、はそちらを見て小さく頷く。
本日、はめでたく歌手としてメジャーデビューを果たした。
配信やCDは前日にフライング発売されているが、本発売は本日である。
「しかもTRIGGERの冠番組の生特番…なんでIDOLiSH7じゃないんですか!!私小鳥遊事務所ですよね?!」
「十くんが振り付け担当だし、レーベルはTRIGGERと一緒だからねぇ。後はタイミングだよ、タイミング。ほら、もうすぐリハだよ」
IDOLiSH7の番組がの発売日に近い放送日ならばそちらに出ただろう。
だが、TRIGGERの番組であること、発売日当日であること、更に生であること。
様々な音楽番組からのオファーで一番条件が良かったのが今日のTRIGGERの冠番組なのであった。
「TRIGGERの前で?歌うの?しかも踊るの?振り付け担当が見てる目の前で?」
「練習してきたから大丈夫だよ」
「家でちょっと合わせただけで、一緒に練習したこと殆どないのに、TRIGGERへの初披露が本番って…!」
デビュー曲の振り付けは龍之介が担当。
だがお互いに忙しく、龍之介が直接に振り付けを教えたのは二回ほど。
が難しく感じた部分は家で共に確認をしていたが、他はダンスの講師と共に練習を重ねて今日に至るわけである。
「さん、リハお願いします!」
「あ、はい!…ふぅ、行ってきます」
「頑張っておいで」
万理に見送られ、はスタッフの案内の元、収録スタジオへ向かう。
「まず、本番が始まったらTRIGGERの三人のトークから始まって、ゲスト紹介としてさんが呼ばれます」
「はい」
「その後、台本に沿ったトークをして、時間になったらスタンバイ、CM明けに新曲披露、という流れになります」
「わかりました」
「おはようございます」
「おはようございます!」
スタッフから台本と共に流れを聞き、頷けば後ろから三人の声。
が振り向けばTRIGGERが揃ってやってきていた。