君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第83章 83
「多分過去にも、今にも未来にも、私には龍くんしかいないだって、改めて思った」
『……今から車飛ばして京都行きたくなっちゃう』
「絶対やめて。途中で絶対眠くなるから」
の言葉に至極残念そうに、残念……と項垂れる龍之介。
「明日最後の仕事なんだっけ?」
『明日は…新曲の振り付けレッスンだよ』
「じゃあお腹空かして帰ってくるね。ご飯いっぱい作って待ってる」
『ありがとう。』
「ん?」
『明後日は夕方からだから、覚悟しておいてね?』
突然天使から夜の獣になるのやめてくれません???
等と真っ赤になり、こくこくとその場で頷く。
「う、うん…」
『…』
「なに…?」
『愛してる』
「わた、しも愛してる…龍くん…電話越しで色っぽくなるのやめて…」
うっかり、今から新幹線に乗れるか考えてしまった。
車で来ようとした龍之介の気持ちがよくわかる。
『は明日何時に起きるの?』
「うーん、朝ごはん6時半からって言ってたから…6時くらいには起きようと思ってるよ。龍くんは?」
『俺も7時に現場入りだから、6時起きかな』
一緒だね。
そう言って微笑みあい、そろそろ寝ようかと互いに呟く。
「龍くん」
『なぁに?』
「大好き」
『俺も。大好きだし、愛してる』
「ありがとう、愛してる」
一緒にいることが多いから、余りこうして電話で長話をしたことは無い。
だから、切り方が分からない。
何より切るのが惜しくて、自分から切りたくなくて、それは多分龍之介も同じ。
『切りにくいね』
「ね。龍くんの声、大好きだからずっと聞いてたい…」
『俺も』
電話を切ったからって、二人の世界が断絶するわけでは無い。
そんな大げさなことでは無くて、ただただ、もっと声を聴いて龍之介を、を感じていたいのだ。
けれど、時間というものだけは時に意地悪で、お互いにそろそろ寝ないと翌日が辛い時間になっていた。
「龍くん、おやすみ」
『うんおやすみ、』
せーので切ってしまおうと、掛け声とともに通話終了ボタンを押す。
「会いたい」
「…会いたい」
東京と京都、一人だけの部屋に、お互いの声が溶けていくのであった。