君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第74章 74
「」
「お姉様…」
部屋を出た瞬間、を呼び止めたのは彼女の姉。
「ちょっと手伝って欲しいんだけれど…」
「私はもうここの仲居ではないので、お手伝いは致しません。着物を着てこうして案内をしているのは仲居としてではなく、女優としての仕事の為です」
「貴女がデビューしてからお客様が増えて大変なのよ」
「そこの人員を賄ったり管理するのがお姉様のお仕事でしょう?こうなる事は予測していた筈です。たった二日しかいない私を頼りにしていて、この先はどうなさるんです?」
の答えに目を見開き、次いで睨み付けるようにを見た。
「女優になってちやほやされるようになったからって、私に口答えできるほど偉くなったつもりなの?」
「私はもう、自分の力で生きられるようになりましたから」
「?」
龍之介がの姿を探して部屋を出てきたらしく、声を掛けられる。
は姉に向けていた憮然とした表情を一転させ、龍之介に振り向いた。
「お疲れ様、龍くん」
「もお疲れ様。今日ずっと着物のまま?」
「ううん、もう着替えるよ。これからは旅館女将代理じゃなくて、お客様としてもてなされる側に移る」
「、どういうつもりなの?」
信じられないとでもいうような表情の姉に視線を向け、はにこりと微笑む。
「私、今回は番組や事務所のお金でなく、自分のお金で宿泊費払ってます。ということは、私は客ですよね?親類だろうとVIPだろうと、宿泊客全てに最高のおもてなしを提供するのが旅館のモットーでしょう?大嫌いな妹にも最高のもてなし、期待してますね?」
黙り込む姉にはダメ押しの微笑みを向け、隣に立つ龍之介を見上げる。
「まだ休憩?天と楽さんも?」
「うん。一時間くらいで温泉の撮影するみたいだけど、それまでは休憩だって」
「温泉…」
「、旅館案内してくれよ。バーとかある?」
「ちょっと、旅先でまで飲まないでよ」
「旅先だからこそいいんじゃねぇか」
「バーありますよ。でも営業は夕方の6時からです」
後から出てきた楽がの頭をぽふりと撫でながら問いかけ、天もまたの隣に立ち苦笑する。