君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第72章 72
は無条件に愛されることを知らない。
だから、いつでも一人で生きて行こうとする。
今回の同棲も、の安定を求めるにはいい機会だとこっそり思っていたが、はあれだけ愛されているにも関わらず、最悪も考えて行動している。
育ってきた環境の影響が大きいだろうが、果たしてこのまま実家へ行かせていいものかと思ってしまう。
「、実家へ帰るのは大丈夫なの?」
「母屋には帰りませんし、大丈夫ですよ」
番組の好意で、は旅館の方に部屋を取ってある。
始めは自宅である旅館の母屋に泊まるつもりであったが、番組側の提案に甘えた。
「向こうも見栄張って特別室泊まらせてくれる言ってるし、部屋に温泉ついてますし、有難ーく泊まらせてもらいます」
「俺にまで部屋用意されて申し訳ないけどね」
「万理さんも日々の疲れを癒してくださいな」
眼鏡をかけなおしながら微笑むに、それでは遠慮なく。と頷き二人はホームへと向かう。
京都までは約二時間。
食事を取って、ある程度ゆっくりさせてやりたい。
まだグリーンなどには乗せてあげられないが、指定席。
ただ、ラビッターなどにの目撃情報が乗るわけにはいかないので、変装はしっかりとしてもらっている。
「はー、お腹空いた。朝ごはん食べても駅弁は入っちゃう…罪深い…」
駅弁にぱくつくを見ながら、万理は小さく頷き、自らも朝食兼昼食代わりの弁当を食べ始める。
「京都かぁ…俺、修学旅行以来かも」
「京都は変わらないものも多いですけど、変わるものも多いから前と違った楽しみが出来るかもしれないですよ」
万理の言葉にはそう言って微笑む。
古き良き歴史的建造物や街並みが多い中、お土産屋、飲食店などは入れ替わりが多いこともある。
もまた、その街並みの中で生きてきたが、毎度目新しいものに出会う度ワクワクしたものである。
「そうなのか、楽しみだなぁ」
「楽しんでいってください」
微笑みに頷き、二人を乗せた新幹線は、順調に京都へたどり着いたのであった。