君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第64章 64
仕事の量に差はあれど、ここは芸能クラス。
いつまでもしつこく質問してくるものは少ない。
「にしても、記者凄かったねー」
「そりゃイケメン俳優と抱かれたい男No2と超人気女優だもん。でもさ、鳳さん大分ヤバいらしいよ」
「え?そうなの?」
「うん、過去に付き合った女の人に子供が出来たけど、手切れ金だけ渡して捨てたとかさ。共演NG出すとこ増えそうだよ」
「はー?やっば」
話題の張本人が目の前にいるというのに、世間はより刺激の高い悪い噂に飛びつく。
八乙女社長の言ったとおりである。
それを目の当たりにし、は苦笑交じりにプリントの束を取り出した。
「プリント職員室届けてくるね」
「あ、私も行きます。この間渡された提出書類があるので」
「お、いこいこー」
一織と二人連れたって教室を出れば、は小さく欠伸。
「眠そうですね」
「確かに眠い」
「夜中にあんな大声出してれば疲れもしますよ」
「……?!!!」
一織のその言葉にはずざっと後ずさり。
「な、何で?!」
「私だって夜中にトイレに起きることくらいあります」
「だ…そ…ええ!?…なんか、すみません…」
「聞いたのが私でよかったですよ。全く…年頃の男女とはいえあんな…」
「ごめんってば…!ちょ、許してホント…」
顔を真っ赤にして両手で隠すに、一織は小さく息をついて気を付けてくださいね、と呟き歩き出す。
職員室にプリントを届ければ一織はを見る。
「そういえば、見事に私を騙してくれましたね」
「それもごめん。万理さんや姉鷺さんに絶対バレるなって釘刺されてたから」
「まぁ、言いふらすものでもないですしね。それで、引っ越すんですか?」
「そこは事務所と相談かな」
「四葉さんがうるさそうですね」
「はは、私も寂しいけどさ。寂しさより皆に迷惑かける方が嫌だし。皆が気にしなくても、皆だけじゃなくて周りに迷惑広げかねないから」
呟くに、一織も納得といったように頷く。
「さんらしい考えですね」
「そう?」
「ええ、ただ貴女はもう少し自分を優先しても良いと思いますが」
「そこは今頑張ってるとこ」
苦笑するに頷き、二人は教室への道を戻るのであった。