君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第51章 51
「ありがと。歌手じゃなくて、女優になることを選んだのも、女優ならファンを直接見なくていいからって思ったからだったんだ」
女優だって外でのロケがあり、そこにはファンが集まる。
舞台に出演することになれば、ファンが席を埋める。
けれど、アイドルや歌手はそれ以上にライブや番組収録でファンと会う機会は多く、その愛を受け取りやすいだろう。
その愛を目の前で感じ取ることが正直怖かった。
だから、それよりはきっとファンに会う機会の少ない女優を選んだのだ。
「アイドルになると、ファンの存在はより大きいからね」
「うん。だけど、龍くんに出会えて、人を愛して、人から愛されるのも悪くないって思えるようになった」
呟き、は龍之介を見上げる。
その目はいつも通り愛らしいが、もっとしっかりとした芯が見えた。
「龍くんや、TRIGGER、IDOLiSH7みたいに、愛を受け取って、何倍にも増やして返せるようになりたいって、最近思うの」
「うん」
「いつか、みんなに愛と感謝を送れるようになりたいな」
「ならきっとできるよ」
「うん、頑張りたい」
「俺、応援するからね」
「龍くんの応援があったら、絶対できるって思っちゃう」
そう言って笑うが何とも愛しくて、龍之介は頷いて抱き締める。
「ずっと応援する。頑張れ、」
「ありがとう。龍くん」
こんなに小さい体で、なんて大きな心を持っているのか。
これまで愛されなかったという劣等感を薄めたは、今までよりもきらきらと瞳を輝かせている。
龍之介はそんなを抱きしめ、再度への愛しさを増すのであった。
「ちょっとだけ、やきもち妬いたらごめん」
「やきもち妬く暇ないくらい、龍くんの事愛してくから大丈夫」
「…世界一愛してる」
「私も、世界の誰より龍くんの事愛してる」
そんな二人の唇が重なるまで、時間がかかるわけがなかったのであった。