君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第5章 5
そして来る木曜日。
朝一の現場入りであるため、は誰よりも早く起きていた。
「緊張する緊張する緊張する緊張する緊張する…」
「っち、何念仏唱えてんの?」
洗面所の鏡の前で項垂れながら呟いていれば、後ろから声を掛けられ跳ねあがってしまう。
「うわぁ?!環……びっくりさせないでよぉ…てか、早いね?仕事?」
「そ。今日はみんなで仕事」
「じゃあ、みんな起きてきてるか」
ならばいつまでも洗面所を占領するわけにいかない。
というか既に準備は整っているのだ。
出発時間も間近に迫っている。
けれど、TRIGGERの十龍之介。
そんな彼のドラマ初主演の相手役を務めるというだけでも緊張感で増し増しなのに、先日の告白もどきを張本人である龍之介に聞かれてしまった。
そしてそんな彼と今日顔を合わせなければならないというこの状況は、の緊張感をさらに上げていた。
「朝ごはんも喉通らないよ…」
「そんなの為にこれ作っといたぞー」
小さなため息と共に吐かれた言葉は、優しい声音に包まれる。
「三月くん…?」
「の好きなクロワッサンサンドと、こっちはアスパラのポタージュ。こっちの小さいのはフルーツ入れてあるから、食欲無かったらこっち食いな?」
「三月くん…ありがとぉぉぉ!!」
その三月の気遣いに、は思わず抱き着いてしまう。
「うお?!良いって良いって!緊張すんのもよーくわかる!でもは出来るって!だから選ばれたんだろ?」
「ん。期待してもらってるんだもんね。うん!私頑張れる!」
「おう!行ってこい!」
「いってらー。みっきーずりー。でもそのポタージュ?俺も食いてぇ!」
三月と環に見送られ、は出かける前にリビングに顔を出す。
「いってきまーす!」
「お、早いな。行ってこーい」
「大和さん、帰ったら難しかったとこ相談させてね。陸!行ってくるね!」
「行ってらっしゃいちゃん!」
「一織、壮五さん、ナギ君!行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい、さん」
「ちゃん、行ってらっしゃい」
「!今日も貴女は美しい…行ってらっしゃい」
が階段を駆け下りると、丁度車から降りてきた万理がを見て微笑んだ。