君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第38章 38
「ちゃん?!」
「あの…あのウィスパーボイスが超絶色っぽい…あの…?」
「あんた、ソロ曲も全部チェック済みなの?!」
「あったりまえじゃないですか!信者のタスクですよ!!」
超の付く力説である。
ナギさんの受け売りだ…と紡は苦笑している。
「ちゃん、ギャラがTRIGGERのグッズ関係に溶けてるって言ってましたね」
「言ってくれたらあげるのに」
「自分で稼いだお金で推しを応援したいんです!」
「龍からもらえばサイン付きよ?」
「ぐっ…」
「になら別のも付くよね」
「うぐ…」
耳元で囁かれ、はぐっと胸元を抑える。
「いる…?」
「ほ、ほしい…!」
「小鳥遊事務所の寮なのに、TRIGGERグッズで部屋溢れてるんですよ、ちゃん」
「ナギ君だってココナまみれじゃん!」
「あ、まだやってたの?打合せ」
「九条さん」
ガチャリと扉が開き、天が顔を覗かせる。
「さん、僕たちのアルバムの件聞いた?」
「オフ削って出てくれるらしいわよ」
「それで体調は賄えるの?」
「勿論。絶対にどの仕事も万全に挑めるようにしてます」
「うん、良いね」
こくりと頷いて、天はを見る。
「君と仕事できるの凄く楽しみ」
「ありがとうございます。私も楽しみです」
「当日、時間あったら僕たち三人でダンス指導してあげる」
「天国ですか…?」
「天は完璧主義だから地獄かも」
「龍の動きについていけるんなら大丈夫でしょ」
「どちらにせよ、私には天国です」
言い切るに、天もうっかりくすくす笑う。
「あ、ちゃん、そろそろ移動です」
「あ、はい。では十さん、九条さん、姉鷺さん、本日はありがとうございました。また宜しくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくね」
「次は明後日だね」
「はい!では失礼いたします」
にこりと微笑み出ていくを見送る。
飼い主に置いて行かれた子犬のような目で扉を見つめる龍之介。
「龍、僕たちも仕事」
「移動しながらお昼食べちゃいなさい」
「はい」
天と姉鷺の言葉に何とか気持ちを切り替え、龍之介もまた次の仕事へと支度するのであった。